生活歴を認知症介護で活用しよう

生活歴とは、利用者が歩んできた道のりであり、それを知ることは認知症ケアにおいても、その人の生活を支えていく上でとても大事なものになります。しかし、介護スタッフの中には、いつの間にか、生活歴が相手とコミュニケーションをとるためのアイテムになってしまっている人も少なくありません。

例えば、アルツハイマー型認知症で過去の記憶として、日本舞踊をしていた頃が一番印象に残っているというケース。もっとも輝かしい時代だったと生活歴から推測できる場合、施設などであれば「他の利用者の前で踊りを披露してみませんか?」と声を掛けることもあるかもしれません。これに対して、当の本人が、お金の出ないところでは踊らないという返しをしてきた場合、利用者は、自分の歴史を非常に軽く扱われたと感じている可能性が高くなります。これは、本人にとってプライドを持ち、舞台に立つために努力もしてきたのにという気持ちがあるから。本人が大事にしていることを介護スタッフも大切に考えなければ、バカにされたと感じられてしまうこともあるため注意が必要です。

また、一般的に人は昼間に活動し、夜間は休むという人が多いもの。施設においても、そのような生活スタイルが基本です。しかし、本人を尊重すると考えた場合、一般的な生活スタイルで組み立てようとすると、それが合わない、苦痛という人も出てくるかもしれません。夜間不眠の利用者の場合、生活歴を聴き取りしてみると、施設に入所前の生活が夜型であった、あるいは長年夜勤帯で仕事をしていたので、夜眠る習慣がなかったということもあるようです。単純に夜間不眠と捉えてその解決策をさがすのでなく、相手を思いやり、生活歴をもとに想像力を働かせて対応することを心がけると良いでしょう。